2017年7月8日土曜日

Staging (ステージング)

今回もアニメーション12原則のうちの一つについての投稿です!

今回は

Staging(ステージング)

について!日本語だと演出と訳されます。が、日本語で「演出」といえば、見せ方のことを指したり、演出する人の役職のことだったりしますね。

もともとは演劇用語なのですが。(なのでステージ=舞台という単語なのです。)アニメーションでも同じように使います。

ではいったいどういうことなのか簡単に言うと

良いステージング=伝えたいことがきっちりと伝わる見せ方になっている。アイデアなどが観客に対して明確である。


ということです。

良いステージングをするためにはまず。伝えたいアイデア。重要なことは何か?ということを明確にします。


それが明確になったら。そのアイデアを観客に伝えるためにベストなのはいったい。

ーどういうカメラアングルか?
ーどういう構図か?
ーどういうペースか?
ーどういうものをフレーム内に配置したらいいか?
ーどういうシルエットがよいか?
ーどういうタイミングか
ーどういう表情か

などなど伝えたいアイデアに沿って決めていきますが。その際どういうチョイスをしたかというのがよいステージングになるかどうかにかかわってきます。

というか伝えたい事が伝わる様にする全てのお膳立てがステージングなので一概にこうすれば上手くいく!というのはありません、ケースバイケースなので。


ステージングはまずアイデアありきなので、全く同じステージングでも、観客に伝えたいアイデアが違えば、良くも悪くもなりえます。

それでは実際に、ステージングってどういうことなの?というのを例で見てみましょう。

例えば三角形が沢山あるというショットがあって「こいつ」を目立たせたい!というのがそのショットに必要なことだとします。

こいつじゃわかりにくいので「こいつ」をジョンと呼びましょう。ジョンを目立たせる方法は色々とあります。

ジョンを大きくしてもいいし↓

 ジョンを小さくしてもいいし↓


ジョン以外を大きくしてもいいです↓


 大きさは一緒で色を変えても目立ちますね。↓

 場所を変えてもいいですね↓

もちろんアニメーションなので、動きを使ってジョンだけ動かして目立たせてもいいし↓

ジョン以外を動かして目立たせてもいいです。↓



今紹介したどれを使っても「ジョンを目立たせる」というのが必要なショットの場合このステージングは成功ということになります。

ですが、もし「でもジョンはサイズがみんなと一緒なんだ」という設定であればジョンと周りのサイズを使って目立たせるというステージングは成功じゃなくなります。

また「ジョンはみんなと一緒の色なんだ」という設定なら、色違いのステージングは間違いになります。

また「ジョンは目立ってはいけない、このショットで重要なのは他とジョンがまったく同じだということを表現することだ。」というのがショットの目的であれば上に上げた例は全てステージングとしては間違いになってしまいます。

ステージングが「伝えたいこと」ありき、というのはそういうことです。

なのでもう一度言いますが、良いステージングとは
伝えたいことがきっちりと伝わる見せ方になっている。アイデアなどが観客に対して明確である。
なのですね!

では、少し良いステージングを作り上げるために大切な要素をいくつか説明しますね。

ショットの種類やカメラアングル
ショットの種類にはどういうものがあるのかというのをいろいろと知っておくとよいでしょう。最後にリンクを張ってあるミスターインクレディブルの映画の分析をしているブログのパート1を見るととても分かりやすいですが。そこにいろいろなタイプのショットの種類が出てきます。
Extreme Close Up(超クロースアップ)
Close UpC(クロースアップ)
MediumShot(ミディアムショット)
など等キャラクターにどれだけカメラが近いか。又は俯瞰なのかアオリなのか?など等いろいろです。
状況に最適なショットの種類を選ぶというのは良いステージングを作るための一つですね。


コンポジション(構成)

ー目線の誘導ー
画面の背景やキャラクターの目線、ポーズなどを使い観客に注目してほしいところに自動的に目が行くような画面構成をするのを心がけるとグッドです!ディズニーとかピクサーの作品を見て、ぱっと一時停止してみましょうそういう画面構成になっているのが沢山あるはずです。例えば、モアナから



適当にぱっと止めたところだけでもこんなにモアナに目線が行くような工夫があります
次に映画を見るときはそういうところにも注意してみてみましょう。何気なくやっているのですが気を使って作られています。

ーRule of Thirdsー
日本語で言えば3分の1のルールでしょうか?
画面を縦横三分割してそこに乗るようにキャラクターや物体を配置するという画面構成の仕方です。
こういうグリッドですね

一つ参考にズートピアからジュディとお父さんお母さんの中心あたりがちょうど線のクロスするあたりに来てますね。

このリンクも参考にしてみましょう。



まだまだコンポジションに関する事は色々あると思いますが、画面をどのように構成するのか?というのはとても大事です。これをしっかり頭に入れておかないと素敵なストーリーボードやレイアウトをアニメーターがめちゃくちゃにしてしまうなんてことにもなりかねません。

黄金比もちょっと関係あるのでこちらの記事も張っておきます。

ゼロから特訓!ビジュアルデベロップメントNo.08

余談ですがこのCGWORLDで連載されている伊藤頼子さんのゼロから特訓!ビジュアルデベロップメントシリーズはすごく面白いのでお勧めです。絵をかかない3Dアニメーターにとって何かためになることが書いてあるの?と思うかもしれませんが絵の構成や絵の大事な事っていうのは3Dアニメーターにとってもプラスになることが多いです。


シルエット
キャラクターのシルエットもすごい大切です。そのキャラクターを黒で塗りつぶしてシルエットにしても何をしているか?がクリアに伝わるか?というのはアニメーションにおいてすごく大切です。

例えば、花のにおいをかいでる人をアニメートしたい!というのなら、それが一発で分かるようなポーズをできればしたいですね。ぱっと見てクリアか?というのが凄く重要です。




タンジェント
これは画面構成の中で物の位置によっては脳が混乱しちゃいがちな構成を避けましょうというやつです。
例えば。
赤丸で囲ってあるところがタンジェントの例ですね。

ちょっとずらすだけで避けることができます。



こういう風にならないように工夫して画面構成をしましょうというやつです。



もちろんアニメーションは動きの連続なので一枚だけそういう絵があったりなどあるかもしれないですができるだけ避けて混乱を防ぐのがいいですね。



というわけで、ステージングについてちょっとだけ触りました。
ステージングについてはまだまだ色々あるのですが、良いステージングをするためには映画を作るうえでの表現の仕方(Film Language)をよく知っておくのが為になります。。
個人的にこの The Cinematography of Incredibles(ミスターインクレディブルのシネマトグラフィー) というページにいろいろと学べるべきことが書いてあるのでリンクを張っておきますね。(こちらは英語です)

パート1
パート2
パート3


ちなみに、エリックゴールドバーグのキャラクターアニメーションクラッシュコースのステージングについてのページは図解付きでとても分かりやすいです。こちらは日本語版がでています。この本はステージングに限らずともとても素晴らしい本ですのでアニメーター志望ならぜひおすすめです。本は2Dアニメーションについてですが3Dアニメーターでも絶対持っておいた方がよい本です。

また、もっと映画のコンポジション等を学びたいときはストーリーボード関係の書籍やチュートリアルも役に立つと思います。
こちらは英語になりますがいくつか↓

https://www.amazon.com/Cinematics-Storyboard-Workshop-Gregg-Davidson/dp/0977861112
https://www.amazon.com/Prepare-Creating-Characters-Animated-Features/dp/0240818784


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